燻製は、やり方が難しそうで自宅で作るのは無理だと思っていませんか?
ところが、下準備不要で、火を入れ始めてから10分程で出来上がる食材もあるのです。必要な道具もフライパンをはじめ、ほぼ家の中にあるものだけ。購入が必要なのは燻すためのチップぐらい。一斗缶もダンボールも使いません。
極工夫道・第6話のような、手間暇かけたブロック肉の燻製ではなく、まずは初心者でも簡単にできる方法で、風味豊かなおつまみを作ってみましょう。
燻製のやり方は「熱燻」「温燻」「冷燻」の3つ
3種類の燻製の違い
ひとことで燻製といっても、燻す時間や温度によって、製法は変わります。では、3つのやり方にはそれぞれどんな特徴があるのでしょうか。
①熱燻(ねっくん)
80℃以上の高温で10分~1時間ほどスモークします。燻製と聞くと保存性に優れたイメージがありますが、この熱燻の場合は燻煙時間が短く食材の水分が多く残るため、保存には向いていません。その代わり、自宅やキャンプなど、手軽にスモークの風味を楽しみたいときには最適。
②温燻(おんくん)
30℃~80℃ぐらいの温度で数時間から1日かけてスモークします。ブロック肉をベーコンにしたり、ひき肉からソーセージを作ったりするときなどに使われる方法。調理や下処理が必要ですので、熱燻よりは手間がかかります。食材や作り方によって差はあるものの、燻煙時間が長い分、水分が少なくなるため、数日から1週間程度の保存が可能。
③冷燻(れいくん)
15℃~30℃ぐらいの低温で長時間かけてスモークします。火を入れない煙のみを使った燻煙法で、スモークサーモンや生ハムなどを作るときに使われます。温度管理が難しく、上級者向け。長時間かけて食材の水分を抜くことになるので、長期保存が可能。
初心者向けは「熱燻」
3つの作り方のうち燻製初心者に向いているのは、食材の下処理が簡単、あるいは不要で、短時間で出来上がる「熱燻」。燻製を自宅ではできないと諦めている理由のほとんどは、手間と時間がかかると思っているからではないでしょうか。しかし「熱燻」であれば、燻煙時間は10分から長くても1時間程度。温燻や冷燻に比べて保存性は低くなりますが、作ってすぐ食べるのであれば、全く問題ありません。
燻製初心者向けの食材はチーズ・ナッツ・卵
プロセスチーズ
自宅で手軽に燻製にできるものの代表格がチーズ。ナチュラルチーズは熱を加えるとすぐに溶けてしまいますので、熱処理加工がされているプロセスチーズを使ってください。
ナッツ類
素焼きでも塩味がついているものでも、どちらでも大丈夫。
ミックスナッツを使い、それぞれの素材で風味を楽しむのもよいですね。
ゆで卵
チーズやナッツと違ってそのまま燻煙にかけるのではなく、ゆで卵にしてつけ汁(めんつゆなど)に2時間~ひと晩漬ける、という手間がかかりますが、一度味わうとやみつきに。半熟か固ゆでかはお好みで。鶏卵とうずらの卵、どちらでもOKですが、燻煙に使うフライパンが浅い場合は、うずらの卵がよいでしょう。鶏卵だと蓋がぴったり閉まらず、煙が外に漏れてしまうからです。
変わり種
ちくわ:下処理なしで使える食材。キュウリやチーズ、マヨネーズなどは、燻製にした後でもよく合います。
ポテトチップス:スナック菓子の中でも表面積が大きいポテトチップスは、風味をつけやすい食材。バリバリ食べていたものが、燻煙後は一枚一枚を味わって食べたくなりますよ。
オリーブオイル・醤油:意外かもしれませんが、液体も燻製にすることができます。燻煙の仕方は他の食材と同じ。耐熱皿(陶器でもOK)に入れて網に乗せ、15分ほどスモーク。オリーブオイルはパンや白身魚、醤油はお刺身が特によく合います。
調味料の燻製でしたら「塩」や「胡椒」もお勧めですわよ♪
フライパンでの燻製の作り方
道具の準備
自宅で燻製を作るときに最低限必要なのは下記5つです。
- フライパン(深めのものがよい)
- 材料を乗せる網
- 蓋(煙が漏れないよう、できるだけぴったり閉められるもの。中の状態が見えるガラス製がおすすめ)
- チップ(サクラやヒッコリーなどお好みで。百均やホームセンターで購入可能)
- アルミホイル
フライパンは、できれば普段の調理であまり使っていないものを選びましょう。燻煙の臭いが残ることがあるからです。空焚きに弱いフッ素加工のものも不向き。ただし、すでに加工が取れてしまったものであれば活用できます。
燻煙の準備
①フライパンにアルミホイルを敷き、チップを軽くひとつかみ分(6gほど)入れる。
②その上に網を置き、食材を並べる。ゆで卵は表面の水分をよく拭き取ってから使うこと。網に直接乗せられないナッツなどは、アルミホイルで作った皿に乗せる。
③蓋をする。
燻煙開始
最初は強火で加熱。チップから煙が出始めたら火力を弱め、そのまま中弱火で10分~15分。センサー付きのコンロの場合、途中で火力が弱まったり消火してしまったりするため、加熱中は目を離さず、手動で調整してください。
火を止めた後しばらくそのままにする
火を止めたらすぐには蓋をとらず、少なくとも10分はそのままにしておきましょう。そうすることで、食材に煙が行き届きます。また、煙がだんだん収まってきますので、時間をおいてから蓋を開けた方が、部屋にこもる臭いも少なくなります。
実はレミパンも燻製調理にぴったりですわ♪ 本当にレミパンって万能!
自宅燻製の注意点は臭い(におい)
ベランダや庭ではしない
燻製は外でするものと思われがちですが、それはよほど広い庭やキャンプなど、煙や臭いを周囲に気遣わなくてよい場合のみ。通常の生活範囲でおこなう場合は、室内が基本です。他人が出す燻煙の独特な臭いが日常生活の中に流れてきたら、不快に思われてしまうのは容易に想像がつきますよね。
布類はできるだけ別室へ
室内で作るとなると、気になるのは家の中にこもる臭い。換気扇をつけていても、どうしても残ってしまいます。特に臭いがつきやすいのは布類。洗濯物やクッション、布製のバッグなど、移動させられるものは、あらかじめ別室に移しておきましょう。
燻煙中と火を切った直後は、室内にまだ臭いがかなり残っている状態ですが、しばらくして煙が収まれば、周囲の状況を見て、窓を開けて換気をします。「周囲の状況」とは、窓を開けたすぐ近くに洗濯物が干されていない、あるいは隣の家の窓が閉まっている、などです。他の料理のときと同じで、2~3日すれば臭いはほとんどなくなりますが、それでも気になる場合は、消臭剤を使うとよいでしょう。
専用器具を使用する
ここまでは、自宅にある道具を使って燻製にする方法を紹介してきました。しかし、どうしても臭いが気になって作るのをためらってしまう、という方は、煙や臭いに配慮した専用の器具をおすすめします。室内で使用することが前提になっていて、初心者向けの「熱燻」に対応しているものを選べば、手軽においしい燻製を自宅で作ることができます。
まとめ
「燻製」と聞くと、食材を吊して時間をかけて作るイメージが強いかもしれません。しかし「短時間で食材に煙の風味をつける」、それだけでも立派な「燻製」なのです。いつものおつまみにスモークの香りをまとわせて、ゆっくり味わう幸せなひとときを、ぜひ自宅で体験してみてください。
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